1978新宿ゲイ

1978新宿ゲイ

中居裕恭

出版社:グラフィカ編集室

新宿二丁目に、初めて足を踏み入れたのは1977年の暮れ十二月、小雨の降る寒い明け方に、カメラをぶら下げてウロウロほっつき歩いていた歌舞伎町で声を掛けてきたオカマと知り合ってからだ。義理があって顔を出さなければ
ならない店があるからこれから付き合ってくれと言う。たちの悪いキャッチだと思って知らんふりしていたが、何となく、そうでもなさそうだったので興味深々にノコノコくっ付いて行った。店の名前はおぼえていないが頭を短く刈り込んだお兄さんが3、4人いて客の相手をしている。祭りみたいにフンドシのひともいる。開店何周年だかのパーティだそうだ。和服姿やドレスで着飾った女装のひとが入れ替り立ち替わり店に入ってくる。外はすでに明るくなっているのでドアが開くたびに朝日が入りこみ、剥げかかった白粉とうっすらヒゲの生えてきた顔が暴露される。店のお兄さんが僕のカメラを見つけて記念に写真を撮ってくれという。酔っぱらった女装の客たちが私も私もと寄ってくる。しばらくして写真を持って行ったらサントリーオールドダルマのボトルをタダで飲ませてくれた。「焼きウドン食べる? 今度クリスマスパーティがあるし忘年会もある。時々顔だしなさいよ。」僕の新宿二丁目デビュー、始まり始まりである。

ー本文より抜粋

12.22

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判型
240x 182 mm
頁数
80頁
製本
ソフトカバー
発行年
2008

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