20
これからも続けたい。まだ空が明るく、目のまえの影が消えないうちに......
大疫病時代の静寂と呻吟、増殖/積層する都市文脈、歪形するイメージ
齢87を数える現役写真家の圧倒的写力、その最新形にして序章
写真家集団〈VIVO〉の創設メンバーであり、『地図 The Map』(美術出版社、1965)や『ラスト・コスモロジー The Last Cosmology』(491+三菱地所、1995)で、世界的に知られる写真家・川田喜久治の最新作品集。本書は、2019年から2020年にかけて、作家個人のInstagramアカウントに日々アップロードされ(いま現在もされ続けている)蓄積した数百を超えるイメージの中から30枚をセレクトし、構成されたものです。
20 / Invisible City
「20」というタイトルの私の新しい写真集は、「咲き終わった月下美人」を皮切りに、2020年に始まった世紀の疫病時代の「赤と黒」の色彩を中継して、「男の影」へと続いている。
30のカットで編まれたものには、始まりの感覚もなければ終わりの嗅覚もない。リズムの強弱もなければ、色や形の韻も踏まず、イメージは混交しながら粘菌のように増殖してゆく。突然の異時同図、影のスクロール、さまざまな幻影が気ままに地を這い宙に浮いたままだ。そこに見えない都市の蜃気楼が揺れる。
20年から続くプレイグタイムのなか、イメージの進行はグロテスクな寓話に近づいたりする時もあるが、新しいストーリーを生むにはほど遠い。さまざまなノイズとともに、いつ失速するかも知 れない想像の淵をさまよっているのだ。
タイトルの「20」とイメージ選択は、20年の晩秋にインスタがきっかけで出会った編集者の川田洋平さんとデザイナーの町口景さん、二人の意志的な発案による。私はA3W和紙にプリントしていた200点ほどのダミー・オブジェを持参、PGIの高橋朗さんの解説で見てもらったのが、「20」へのスタートだった。
これからも続けたい。まだ空が明るく、目のまえの影が消えないうちに......。
2020年11月24日 東京
川田喜久治
- 判型
- 257 × 182 mm
- 頁数
- 32頁、掲載作品30点
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2021
- エディション
- 700