The Swamp
ブラジル人フォトグラファー Sofia Borges(ソフィア・ボルジェス)の初作品集。背表紙に“Reality as mud as dense as air(泥や空気のように濃い現実)”とあるように、本書で紹介される写真は鉛のように重く、貫き難い。これらの作品は、作者が7年に渡って数知れず訪れた自然史博物館、動物園、水族館や研究施設において、現実による技巧が彼女の焦点となった様子が記録されている。作者にとっては生息地のジオラマは対象物が自身を高潔に表すことができる究極の表現方法である。そしてここで言う「自身」は幾層もの歴史や意味づけによって本質的に言葉に縛りつけられている。プラスチックでできた南極に横たわる動かぬセイウチや剥製鳥のビーズのような眼が読者の視線をとらえるとき、『The Swamp』の深みから見返してくるのはその物自身ではなく、イメージのイメージのそのまたイメージなのである。
「私が探し求めているのは、その技巧自体が問題提起となっているイメージだ」
本書は滑稽さと死して生きらえるものを生み出す美術館の光景のその先に、イメージも「読みとる」ことができるという考えを示す。劇作家ベケットの不溶な言葉と、デヴィッド・リンチ監督のシネマ的な精神錯乱両方にインスピレーションを受けながら作者は無作為に怪物のようなフォルムや粗い画像を見せつけることで作為的に読者の感覚を攻めたて、理解という本来合理的なプロセスを混乱させる。
過去に写真集 出版経験の無い作家の出版支援を目的とする「First Book Award」2016年グランプリ受賞に伴い発行。
— ディストリビューター説明文
- 判型
- 260 x 210 mm
- 頁数
- 184頁、掲載作品71点
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2016
- 言語
- 英語