Sommat
『Sommat』は、イギリス人写真家、ニック・ワプリントンの最新作で、30年にわたる未発表の写真を大判の3冊の本で発表している。
I) Horn Again: Unseen McQueen
2008年、イギリスのファッションデザイナー、アレキサンダー・マックイーン(1969-2010)は、友人であるワプリントンに、彼の創作過程を至近距離で記録することを依頼した。その後1年間、ワプリントンはマックイーンの回顧的なクチュールコレクション「Horn of Plenty」のコンセプトからキャットウォークまで、マックイーンと共に制作を進めていった。マックイーンの早すぎる死後、このプロジェクトの画像は『Working Process』という本として出版されている。今回、ワプリントンはこのコラボレーションで撮影された未発表の写真に加え、コレクションの開発過程やデザイナー自身の親密な姿を追加して紹介している。
II) You Should Be with Us, Los Angeles 1995/6
ワプリントンは、代表作「Surf Riot」を完成させてから10年後の1990年代半ばにロサンゼルスに戻り、再び生活していた。長期的なプロジェクトから離れることを決めた彼は、代わりに自身の人生を撮影し、社会の片隅で楽しみを探す若者の視点からこの街を記録した。ラップバトル、シエラネバダ山脈でのレイブ、ローライフパーティー、そして大ヒット番組「Baywatch」の撮影現場まで、ワプリントンはこれらのイメージの中に私たちを連れていく。『You Should Be with Us, Los Angeles 1995/6』は、ロサンゼルス暴動(ロドニー・キング事件)と来るべきデジタル革命の狭間にあるロサンゼルスのユースカルチャーにどっぷりと浸かることができる作品である。
III) Sommat
19世紀のコンゴを舞台に、植民地時代の不運を描いたジョセフ・コンラッドの小説『闇の奥』をゆるやかにベースにした『Sommat』は、ニューヨークの内陸部を蛇行しながら冒険し、コンラッドの小説が始まるイギリス・テムズ河口にゴールインするものである。その道中、何もない都会の風景や崩壊寸前の都市の残骸といった荒涼としたイメージを目にし、ワプリントンのブルックリンのアトリエに足を踏み入れる。まるで魔法のような移動で、『闇の奥』の英雄である船乗りのマーロウのようにテムズ河口から海を眺めることになるのだが、このときワプリントンは、冒険家の代わりに小さな子供たちを登場させたのである。遊び心にあふれたイメージ、テキスト、ペインティングで構成されたこの形而上学的な作品は、写真芸術の新しい展開の最前線にいるワプリントンを示している。決して立ち止まることのないワプリントンは、驚くべき陰謀と計算された観察の視覚的な旅へと私たちを誘うのである。
― ディストリビューター説明文より
*箱に若干のヘコみ有り
- 判型
- 390 × 280 mm
- 製本
- ソフトカバー、ケース
- 発行年
- 2021
- エディション
- 650
- ISBN
- 978-1-838035-43-3