私たちの「東京の家」
家というものは、どのような形態であれ、編集された人生が投影されてしまう場所だ。 このまま世界がますますグローバル化し、人の移動が加速してしまうと、安定した世界観と結びつく自分の存在を編集するのは困難になってくる。 人間は自分の存在を確かめるために、固有の文化とか独自のアイデンティティーを自身のレイヤーに重ねておきたいという方向に向かうだろう。 そのときは、家にも同じような運命が託されるかもしれない。
私たちはまず、自分たちの記憶や出来事を投影できる建築特異地点を探し、写真に定着させることに注力する。 そして東京に戻り、その写真イメージをもとに材料を選んで「東京の家」をつくる。 そして今度は、つくった家のイメージから新たな撮影地点を探す。 こうした文化の吟味と材料の選択という、エクレクティックな作業が20年以上繰り返されているのが、私たちの「東京の家」だ。
現代社会では、これまで時間をかけて一つひとつ継次処理してきた問題を、コンピュータが瞬時に同時処理してしまう。 人はインターネットでつながれたサイトを、迷宮をさまようように巡る一方で、そのサイトの連なりを俯瞰して世界の構造を垣間見る。 私たちの写真も、それぞれのシリーズのあいだで、時間と場所に継次的な隔たりがある。 写真の内容を建築に変容させることで、異なるシリーズの写真も建築の中で同時処理され、同じ時間と空間に存在することができる。 すべての写真体験は「東京の家」に包み込まれていく。
ー本書より抜粋
- 判型
- 243 × 183 mm
- 頁数
- 160ページ
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2014