香港 1995-1997 (青)
「山内道雄の写真が持つ粗びた粒子と強いコントラストでとらえられた顔貌のクローズ・アップは、ストリートを行き交いする人間のエネルギーや街の猥雑さが息苦しいほどに見る者に迫ってくる。そのまなざしは決して安定的なものではない。不用意に街角でぶつかってしまったような出会いの瞬間のエネルギーが、一枚の写真として凝固してしまっているようだ。どの写真にも、被写体との距離感を測ることのできない不思議な居心地の悪いまなざしが貫かれている。…
…いまから20年前の1995年から97年に撮影されたネガをもう一度見直し、新しく編集しなおされた「香港」は、山内の方法が作家本人とって有効であるだけでなく、現在の写真表現の問題としていまだ有効であることを物語ってやまない。それはジャズにおけるハード・バップやロックにおけるヘヴィ―・メタルがいまだに「現在」の表現として多くの人々にリアリティーをもって受け取られるように、1980年代に確立した写真表現の様式がいかに有効で、かつ可能性をもっているものであるかを、山内の写真は雄弁に物語っていよう。そして、その様式によってしかとらえられない「世界」が現実としてたしかにいまだ存在しているということを、雄弁に物語ってもいるのだ。」
― 金子隆一「変わらなさの有効性」より抜粋
- 判型
- 246 x 326 x 27 mm
- 頁数
- 198頁、掲載作品103点
- 言語
- 日本語、英語
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2015
- エディション
- 700
- (赤表紙
- 500/青表紙:200)