LUMIÈRE / PRIÈRE / 2020 年初頭、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大によって、人々は他者との接触を極端に減らし、自宅などの限られた空間に閉じこもることを余儀なくされました。写真とともに生きてきた瀧本幹也も、多くの関係者が関わる仕事が軒並みストップしてしまったことはもちろん、それまでの作品づくりのように世界各地に飛び、大がかりな撮影もできなくなりました。 そんなとき、偶然目にした野に咲く菜の花。季節が巡るたび繰り返し芽吹く小さな植物の命や記憶は、一体どのように繋がってきたのだろうか。その内部に息づく「小宇宙」を探求すべく、小型カメラひとつで野の草花を見つめたシリーズが「LUMIÈRE」 (フランス語で「光」)となりました。 一方、2020 年秋。京都で国際写真祭に参加した瀧本は「円融」 (仏語。すべての事物が完全に溶け合い、互いに妨げないこと)という言葉に出会います。人気がなくなり、静寂の中にたたずむ古都の寺社を訪れたとき、過去から現在、そして未来へと脈々と続いてゆく時の流れに自らも連なっていることを感じます。その連なりをとらえるべく、寺院を歩いて巡りながら撮影したシリーズが「PRIÈRE」 (フランス語で「祈り」)に結実しました。 惑星や宇宙、生命に魅了され、表現してきた写真家が、写真を撮る歓びを再認識して生み出した2つの新作。コロナ禍を経て、新たな展開を迎えた瀧本幹也の作品世界をぜひご覧ください。
続きを読む2025/03/22
0 likes