Being there
———雪国、特に最北の吹雪の道を走っている時など、自販機の灯で自分の位置を確認することもある。そんなとき、道ばたで光り輝いている自販機は「笠地蔵」にも見える。今や至る所に自販機が置いてある。それは、日本がいかに安全な国であるかということの証でもある。(…)自販機のある風景から、見えてくる「今」をこれからも記録して行きたい。」(大橋英児)
「笠地蔵」は、暮らしは貧しいが心の清い老夫婦が、道ばたの地蔵尊に菅笠を被せてやり、その恩返しを受けるという有名な日本昔話である。地蔵尊と同様、自らの意思で動くことのない機械に、大橋は強い存在感を見出したのである。自動販売機の灯でライトアップされた雪景色は特に美しく、人々が寝静まった深夜の雪景は、深い思考の世界へと見る者をいざなう。また、原野や街中に置かれたその姿からは、孤独にじっと耐えているような人間くささも感じる。光と影が織りなすモノトーンの世界は、自動販売機の個性をより際だたせ、ありふれた風景の中に新たな命を吹き込むのである。
−関次和子(東京都写真美術館学芸員)あとがきより
- 判型
- 225 x 297 mm
- 頁数
- 88頁、作品60点
- 製本
- ハードカバー
- 発行日
- 2017
- 言語
- 英語、日本語
- ISBN
- 978-4-908526-18-3