オノデラユキ
Yuki ONODERA
1962年東京生まれ。1993年よりパリにアトリエを構え世界各地で活動を続ける。
カメラの中にビー玉を入れて写真を撮影したり、事件や伝説からストーリーを組上げ、それに従って地球の裏側にまで撮影に行ったり、あらゆる手法で「写真とは何か」「写真で何ができるのか」という実験的な作品を数多く制作し、写真という枠組みに収まらないユニークなシリーズを発表。さらに自分自身で2m大の銀塩写真をプリントし、油絵の具を使ってモノクロ写真に着彩するなど、数々の独特な手仕事の技法でも知られる。
その作品はポンピドゥ・センターを始め、サンフランシスコ近代美術館、ポール・ゲッティ美術館、上海美術館、東京都写真美術館など世界各地の美術館にコレクションされている。
主な個展に国立国際美術館 (2005)、国立上海美術館 (2006)、東京都写真美術館 (2010)、ソウル写真美術館 (2010)、フランス国立ニエプス美術館 (2011) などがある。
オノデラユキは現代美術として写真を操る作家である。時に、新聞の切り抜きを用いて作品を作る等、写真に手を加えながらアナログに創り上げて行く作品は、近年では数メートルに至るなどダイナミックに展開している。しかし一方で、オノデラは写真家の中の写真家ともいえる作家である。彼女にとって写真とは単なる素材ではなく、それ自体が探求されるべき対象なのである。1839年にダゲールのダゲレオタイプにより始まる写真技術は、既に18世紀中頃に予見されていた。人々はなんとかして今この瞬間をありのままに留めておきたいという願望を抱いていた。写真は偶然に発見されたのではなく、そんな熱い想いから生み出されたのである。そして写真は瞬く間に発展し、想像を絶する視覚を人々にもたらした。モホイ=ナジは1928年に「写真に通じていないひとが、未来の文盲になるだろう」とさえ述べている。この新しい視覚による認知は知らない間に生活に浸透し、コミュニケーションに欠かせないものになった。オノデラは、写真によって複雑化した人間の認知や想像力を、もう一度まっさらな状態になるまで紐解くような野心的な実践を行なっているのである。それにより、現代のあり様を把握しようとしている。ただ、その高度に理論化されたモチベーションは、彼女の芸術的美意識の達成のために奉仕するスパイスのようにさえ感じられる。何より彼女の作品には、視る者の心をくすぐる危うくも美しいバランス感覚がある。人は必ずオノデラユキの作品の前に、脚を止めるだろう。そして、そこから謎解きをはじめるのである。
個展
東京都写真美術館/東京
ソウル写真美術館/ソウル
ツァイト・フォト・サロン /東京
2011
国立ニセフォール・ニエプス美術館/シャロン・シュール・ソーヌ/フランス
ヨッシ・ミロ・ギャラリー ( Yossi Milo Gallery ) /ニューヨーク
2012
ヴァンガード・ギャラリー ( Vanguard Gallery ) /上海/中国
2013
ギャラリー・ルイ・ジャンドル ( Galerie Louis Gendre ) /パリ
2014
国立アートセンター Masion d’Art Bernard Anthonioz /ノジョン・シュル・マルヌ/フランス
2902 ギャラリー/シンガポール.
ボージェスト・ギャラリー ( Beaugeste Gallery ) /上海
2015
ヨーロッパ写真美術館/Maison Européenne de la Photographie/パリ
ツァイト・フォト・サロン/東京
2016
アートバーゼル香港/Art Basel Hong Kong – Vanguard Gallery/香港
2017
ピエール・イヴ・カエ・ギャラリー/Pierre-Yves Caër Gallery/パリ
2018
ヴァンガード・ギャラリー/Vanguard Gallery/上海/中国
京都写真美術館/京都
キド・プレス/東京
2020
Burning with Desire/ICICLE SPACE 之禾空间/上海
From Where/THE GINZA SPACE/東京
To Where/Yumiko Chiba Associates/東京
Everywhere Photographs/Zeit-Foto Kunitachi/東京
2022
Centre de la Photographie de Mougins/フランス
RICOH ART GALLERYリコーアートギャラリー/東京
2023
Wamono Art/香港
受賞
1996 - 第21回「写真批評家賞 KODAK」審査員特別賞受賞/フランス
2001 - 第17回「東川賞新人作家賞」受賞/日本
2002 -「日本写真協会新人賞」受賞/日本
2003 -「木村伊兵衛賞」受賞/日本
2006 - 「ニエプス賞」受賞/フランス
2011 - 「芸術選奨 文部科学大臣賞」受賞/日本
2011 - 「第27回「東川賞」受賞/日本