惑星
2020年に刊行した『惑星』を、山内自身が刊行後に得た体験を元に見つめ直し、再編集した新装改訂版。
遊牧民たちの暮らしを捉えたパートには未発表作品を加え、写真が大きく見えるようにレイアウトを変更。現代の文明都市、街のスナップでまとめたパートは一章丸ごと構成し直しました。砂漠のパートでは片観音開きになるページを追加し、表紙デザインは継承しつつも仕様を変更するなど、大きくリニューアルした内容となっています。
2014年にはじめてモンゴルを訪れた山内は、現地の人に「モンゴルに原始的な人々暮らしがある」と教えられたことをきっかけに、足かけ5年に渡る旅が始まりました。
山間部でトナカイとともに暮らす幻の民族、荒野で鷹で狩りをする人たち、
砂漠でラクダと生活する人々や、果てしなく続く草原で羊やヤギとともに暮らす遊牧民――。
自然の中で動物たちとともに暮らす人々の光景に山内は「楽園」を見たといいます。
轍ひとつない荒野を行くこともあれば、人が介在していない、圧倒的な自然がそこかしこに現れる。
ランドクルーザーで何万キロも移動し、「いつ」「どこ」という感覚が薄れる中、いつしか旅の対象は「モンゴル」ではなく地球という「惑星」そのものになっていきました。
そして、旅のはじまりと終わりはいつもウランバートルという都会。
社会主義時代の名残りが色濃く残る、不思議な街。
旅を終えた時、写真を振り返ると、思わぬ光景が写し込まれていました。
地球の創世を思わせる鉱物の世界、現代の文明を享受する都市、既視感のある近未来的な砂漠の風景……。これらのまるで異なる世界が、原始的な人々の「楽園」的な暮らしと隣り合わせに存在していることに、気づいたのです。
あたかも人類の歩みを俯瞰するようでありながら、実際には、同時に、ひとつの国に存在する世界。宇宙に広がる惑星から、ひとりひとりの足元に至るまで、無数の世界が並行して存在し、相対的な異なる「いま」を生きていることに、山内は考え至りました。
常に自然と人間との関係性を見つめ、視点の転換を通して私たちの世界の在り方を探求する山内悠。宇宙と地球のあいだを行き来した『夜明け』の作品から、今作ではモンゴルのドキュメンタリーを超えて、並行して在る空間と時間への旅を提示しています。
私たちが今ここにあるということ。その全てが「いま」という瞬間における無数の選択の集約であること。
新型コロナウィルスの感染拡大もあり、人類が転換期にある最中、私たちはこれからの「いま」をどう選択し、どうあるべきなのか。大きな示唆と力強いメッセージが込められています。
― 出版社説明文より
- 判型
- 210 × 297 mm
- 頁数
- 144頁
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2020
- 言語
- 英語、日本語
- ISBN
- 978-4-86152-928-3 C0072