赤い糸
「日常のなにげない視界のなかに、一瞬、ふと通りすぎる異界を、さりげなく写し止めるデリケートな感性と視線。数多くの作者のカラー・プリントをめくっていくと、澄んで硬質な情念が見るものに伝わってくる。米澤純子さんの作品『赤い糸』は、さながら一冊の言葉ならざる詩集を見る感じがあった。」― 森山大道
「6×6判の静かな写真が並んでいるだけに見えて、写真と写真との合間から細やかな感情のさざ波が広がって、見る者を搦めとっていく。透明な哀しみ。生と死がどこかでメビウスの環のように繋がっているような感触。これから先、表現のレベルがもう一つ突き抜けていくのではないかという予感がする。」― 飯沢耕太郎
赤い糸
前をいく人が、今、振返ろうとしている。
不意の懐かしみに
私は、
胸を衝かれている。
魂が深い哀しみを思い出したときだ。
かつて、
長く留まったこともあったというが、
ただ往き過ぎたこともあったのだ。
ときを越え一つの結び目をつくり、
「同じことだった」、
口を揃え、笑っている。
終わることのない今に、圧倒される事無く続いていく。
その確かさを知っている
形のないものたちの現れ出でる姿に、
わたしはこころを奪われる。
そしてそこに見ようとする。
今此処にあることの、懐かしい哀しみを。
―米澤純子、後書きより抜粋
- 判型
- 253 × 284 mm
- 頁数
- 80頁
- 製本
- ハードカバー
- 監修
- 上田義彦
- 発行年
- 2014